頭頸部外科
頸部腫脹
原因は様々ですがくびにしこりがある状態で、精査が必要になることが多いです。炎症性のリンパ節腫脹、良性腫瘍、癌の転移などの鑑別が必要です。
くびが腫れて痛みを伴う場合が炎症や癌の転移などの可能性があり注意が必要です。以前から腫脹があり大きな変化がない場合は良性腫瘍などが考えられます。
原因の精査目的に頸部エコーを行います。希望される場合は腫脹した病変に細い針を刺して細胞の検査を行い良性悪性の判断を行うことが可能です。
炎症が原因であれば抗生剤を使用します。気道の狭窄がある場合は入院加療が必要になります。精査目的に大きな病院への紹介を検討させていただきます。
頚部痛
くびに痛みがある状態です。原因は様々ですが、筋肉痛など経過観察で改善するものから、炎症性のリンパ節炎、早期の対応が必要な頸部膿瘍、癌の転移などの鑑別が必要です。
くびが腫れて痛みを伴い、皮膚の色調も変化がある場合高度な炎症や癌の転移などの可能性があり注意が必要です。原因の精査目的にのどの観察、内視鏡検査や頸部エコーを行います。原因がはっきりせず痛みが長引く場合CT検査などをお勧めします。
炎症が原因であれば抗生剤を使用します。原因がわかればそれに沿った治療を行います。
耳下腺腫瘍
唾を作る組織を唾液腺と言い、その最も大きなものが耳の下にある耳下腺です。唾液腺には腫瘍が発生し、その内約8割が耳下腺に発生します。多くが良性腫瘍ですが 2割程度は癌とされ注意が必要です。良性腫瘍は痛みもなく顔の動きの麻痺を起こさず、自覚的には気づかない無痛性の腫瘤であることが多いとされます。一方癌は痛みや顔の麻痺、皮膚の発赤などの症状をきたします。
検査としては超音波で耳下腺内に腫瘍の存在を確認し必要があれば針を用いた細胞の検査を行います。細胞の結果次第でもありますが手術をお勧めすることが多くそのような場合は手術が可能な施設に紹介させていただきます。
上顎癌
上顎洞とは頬骨の中にある空間のことで、鼻と連続しています。ここに鼻に関連した癌の半数以上が発生します。
症状としては片側の悪臭を伴う鼻漏や鼻出血、頬の腫脹等があります。癌の進展方向に応じては歯の痛みや目の位置が左右で異なり物が見えにくいなどの症状をきたします。
レントゲン検査やCT検査が必要になります。
治療は手術や放射線抗がん剤などが行われます。治療可能な施設に紹介させていただきます。一側の頬が腫れて痛みが続く場合は早期の受診をお勧めします。
舌癌
口の中に発生するがんの約6割が舌癌です。歯が接する辺縁に好発しやすく、早期よりリンパ節転移もきたすため、予後不良な疾患で注意が必要です。
喫煙や飲酒歴のある50〜60代の男性に好発するとされます。虫歯や入れ歯付近の舌縁部に違和感や痛み、しこりや腫瘤、潰瘍などの粘膜不正などの症状として現れます。病変が大きくなると会話や飲み込みにも影響を与えます。
検査としては病変の様子を観察し組織を採取する病理検査が重要です。
診断がつき次第癌に対する治療が必要です。手術が考慮されます。
上咽頭癌
上咽頭とは鼻の一番奥の空間で部分で、そこに発生する癌を上咽頭癌いいます。発症にはウィルスが関与しており、若い方にも発症します。
自覚症状は乏しく早期発見が難しい病気です。頸部のシコリや耳の中に水が溜まり耳閉感や難聴、鼻閉などの症状を認めます。腫瘍が増大するとそれ以外にも目の見えづらさや顔面の感覚障害や嚥下障害なども出現します。
内視鏡で上咽頭に腫瘍性病変がないかを確認します。必要に応じて組織を採取する検査が行われます。
場所から手術が難しい部位でありますので、一般的には放射線や抗がん剤治療が行われます。治療可能な施設に紹介させていただくこととなります。
中咽頭癌
口から見える範囲、のどちんこの周辺や扁桃腺がある部位が中咽頭で、そこに発生する癌が中咽頭癌と呼ばれます。長期の喫煙、飲酒歴がある60代以上の男性に見られますが、最近ではウィルスが関連するタイプが若い年代の方にも多く見られるようになってきています。
症状としては頸部の腫れや、のどの違和感や痛み、嚥下時痛などがあります。片側の扁桃腺だけ腫れている場合などは腫瘍の可能性が考えられます。
検査としては鼻や口から内視鏡を行い腫瘍がないか確認します。必要があれば組織を採取する検査も行います。
治療はウィルスの関与により予後が異なり、その有無が治療結果に大きく依存します。治療可能な施設に紹介させていただきます。
片側の扁桃腺が大きい場合、中咽頭癌以外にもリンパ腫と言って血液の病気が隠れていることもあります。口の中を覗いて一束の扁桃腺が大きい場合は受診を検討してください。
下咽頭癌
下咽頭とはのどの奥の空気の通り道と食物の通り道が分かれる場所の食物の通り道側、食道の入口です。そこに発生する癌を下咽頭癌と言い、発症には喫煙や飲酒が関連しています。女性では慢性的な鉄欠乏性貧血が関連していると言われます。
症状として咽頭の違和感、痛み、嚥下時、声が擦れや血痰などです。頸部リンパ節転移が起こると首のしこりが現れます。
検査としては内視鏡行い下咽頭に腫瘍が存在しないかを確認します。
治療は手術放射線抗がん剤等が検討されます、治療可能な施設に紹介させていただきます。
喉頭癌
声を出す為に必要な声帯が存在する場所が喉頭と呼ばれそこに発生する癌のことを喉頭癌といいます。喫煙が誘因となり高齢男性に比較的多く見られます。
症状としては声がすれや喉の違和感、進行すると頸部のリンパ節腫脹などが認められます。
検査としては内視鏡を行い喉頭に病変がないか不整な隆起がないかを確認し必要があれば組織を採取する検査を行います。
治療としては病気の進行に大きく依存するので大きな施設に紹介させていただきます。
治療によっては声を失う可能性もある治療を選択せざるをえないこともありますそうならないためにも声がすれが長く続く場合は早期の受診をお勧めします。
頸嚢胞
嚢胞とは分泌物が袋状に貯まる病態ですが、頸部も嚢胞(風船)を形成する疾患は多数存在し、正中頸嚢胞、側頸嚢胞、リンパ管腫などが代表です。
正中頸嚢胞は首の真ん中に、側頸嚢胞は首の脇に、リンパ管腫は顎下に比較的できやすいものです。内部の貯留物の状態にもよりますが薬剤による硬固療法や手術による摘出が検討されます。治療可能な大きな病院に紹介させていただきます。
一見嚢胞状の良性の腫瘍に見えても悪性腫瘍が頸部に転移している可能性もゼロではありません。首の脇が長く腫れていて気になるなどの症状がある場合は一度ご相談することをお勧めします。
首の脇が腫れていて、さらに肌も赤い痛みが伴うなどの場合は細菌などが炎症を起こしてる可能性が高く、進行すると呼吸苦なども起こす可能性があり早期の受診が必要です。
甲状腺癌
甲状腺は頸部の真ん中やや下方に存在する組織で体に必要なホルモンを分泌する組織です。ここに発生する癌を甲状腺癌といいます。癌のタイプがいくつかありますがその多くは乳頭癌です。甲状腺には良性の腫瘍も発生しやすく鑑別が重要になります。
比較的増大速度は遅く症状としても頸部の腫れ程度です。大きくなると声がすれの原因になります。
検査は超音波で甲状腺に腫瘍が存在するのか、癌を示唆するような所見があるかを確認します。必要があれば針を刺して細胞の検査を行います。
癌の可能性が考慮されれば手術が必要です。良性腫脹であれば定期的なエコーでの経過観察が可能です。